100日愛 [短]
―――――…………
「ただいま」
「お帰りっ!」
玄関に、薫が出てきた。
早くもエプロンを付けていて、夾は微笑んだ。
ビニール袋を受け取ると、嬉しそうに中身を確認する薫。
「何作って欲しいのか当ててあげる!……オムライスでしょ」
「正解だ」
キッチンに立った薫は振り返って「ふふ」と笑った。
小さい背中を見ながら、夾は物思いに耽る。
トントンという、包丁が刻むリズムがそれをどんどん深くした。
――――――――――
『…あ』
長い髪を翻して、夾の声に振り返る薫。
『この前の…美術科の…』
『せ、…先日はすいませんでした!ありがとうございました』
『いや、俺のほうこそゴメン』
『いえ、あの…。お名前、聞いて宜しいですか?』
『は?』
『あっ、あの!お礼がしたくて…』
『あぁ、いいよそんなの』
『で、でも…っ』
彼女の必死さに、夾は少しだけ笑った。
そして――――