100日愛 [短]
クサマ
『草間夾…』
ゆっくり口を開いた。
『草間くん?』
『そう。医学部の一年』
『あ、薫と同期なのですね』
『薫?…ふーん、薫っていうんだ』
『あっ、はい!
ヤグモ
八雲薫です』
ペコリと体を曲げたその姿に、夾は自然に微笑んでしまった。
薫が夾を誘ったのは、この数日後。
一緒にいて、
胸が温かくなる理由は分からなかった。
ただ、彼女だけは周りの女とは違う。
きつい香水振り撒いて、ツカツカ歩くような女じゃなくて、
優しい家庭や柔らかい香りを纏って、ゆっくりとトテトテ歩く。
歩幅が合わせにくくて、夾が先に歩いたときだって、犬のように軽く走って隣にいた。
そしていつの間にか、
――――お互いしっかりとした告白というものさえなく――――
「八雲」から「薫」に変わり、
「草間くん」から「夾くん」になる。