100日愛 [短]
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懐かしい匂いが、鼻を掠める。
…ケチャップライスの匂い。
それが夾を現実に引き戻した。
目を開けると、薫の顔が間近に迫っていて、思わず「うわ」と声を上げる。
頬に当たった黒髪をすくった。
「寝てたの?」
「いや。考え事してただけだ」
「急がしいんだよね?…医者関係の仕事は」
「まぁ…な。でも平気だ。好きでやってるんだし」
フッと遠い目をした夾を、薫は優しい苦笑いで受け止めた。
「変わらねぇな。この髪は」
「えー?何それ」
すくった髪の毛にキスを落とす。
その仕種に薫はドキリと胸を弾ませた。
夾の手に、ゆっくりと自分の手を沿えた。
「ご飯、出来ましたよ」
「ん。…サンキュ」
キスを一つあげて、夾は立ち上がりテーブルについた。
目の前に、二つのオムライスが置かれる。
隣に薫が腰掛けた。
「「いただきます」」