100日愛 [短]
でも薫は一つだけ、自分はやっぱり屍なんだと感じるものがあった。
それは、寒さも、温かさも分からず。
お腹も空かないこと。
朝ご飯を食べろ、って彼は言ってくれたが、薫は少し抵抗があった。
「…どうしよう」
冷蔵庫を開けても何の欲も出てこない。
だけど食べなければ夾の優しさは水の泡だし、心配だってかけてしまう。
ゆっくりと手を伸ばして掴んだのはバナナ。
これでいいや…。
口に入れると、ふわりと甘さが広がった。
味覚は失わずにすんだことを心から感謝する。
重々しく飲み込んで、テーブルから立った。
そして――――――
寂しくなった左手を摩った。
夾くんがいないのは今日だけ。
明日はまた休んでくれたみたいだし、明後日には………
だから、今日で終わらせなきゃ…。
薫は心の中でブツブツものをいいながら動きはじめた。
目的を――――果たすために―――――