100日愛 [短]
「草間くん…?」
栗色の髪が優しい匂いをともなって揺れ、夾のデスクを撫でた。
俯いていた顔を左に向ければ、同僚の女性が、不安げに窺っていた。
「お昼ご飯食べないの?」
何も置かれていない…いや、正確には昼休憩の前と何も変わらない仕事道具が置かれているデスクに目を向ける。
試験管はとっくに色を変えていた。ということは、もう一時間以上経っているようだ。
何度か瞬きをする。
「…ボーッとしてたみたいだ」
そんなのは嘘。
でも、時間を忘れるくらい薫のことを考えていたのは本当だ。
まさか昼休憩を全て費やしてしまうとは思ってもいなかったが―――。
今何をしているんだろう…。
ちゃんと飯は食っているのか?
―――消えてはいないだろうか?
ぐるぐると渦巻くように淀む考え。