100日愛 [短]
左腕で回る時計の針は、二時半を示している。
どうやら今から腹を満たす時間はなさそうだ。
「もうこんな時間か…。まぁ食わなくてもいっか…な?」
語尾が上がってしまった理由はちゃんとある。
試験管の前に突如現れた紙パック。それから細い手が離れていく。
“何だこれ”―――そう聞くまでも無く、
『これ一本で一日の摂取量が取れる!!野菜ジュース』
オレンジや紫で彩られたパックは、そんな文字を載せていた。
「草間くんは野菜足りてなさそうだから。…奢りだよ」
モナリザのような笑みで去って行き、目の前のデスクに就く。
翻った白衣の残像を追うようにして、彼女を見つめた。
その視線に気づいたのかもう一度目が合う。
相変わらずの笑みは、不甲斐なくも…薫を思わさせる。