100日愛 [短]
白衣を翻して、目の前のデスクについた。
もう一度だけ、野菜ジュースに目をやってから夾はフッと鼻から息を吐く。
「失礼だな。ちゃんと毎日野菜は食ってるよ」
紙パックにストローを差し込む際に、彼女の視線が顕微鏡から離れて夾に戻った。
「へぇ…意外」
「おい」
ツッコミを入れながら野菜ジュースを口に含む。
『もう。夾くんは全然野菜食べないんだから。これからは毎日食べさせてやる!…覚悟してね?』
転居前の自宅の冷蔵庫を見てそう口を尖らした。にも関わらず、すぐに次は口の端を持ち上げ笑みを光らす薫が目に浮かぶ。
野菜は嫌いなわけではないが、一人ぐらしとなるとその摂取量は大幅に落ちる。
別に食べなくても…、というめんどくさがりやの悪い癖だ。
だけど薫と同居を始めてからは毎日食卓に緑や赤が並ぶようになった。
それは彼女がいなくなった間も変わらない。