100日愛 [短]
そして――――
「はいっ」
天使のような微笑みで、そう頷いた。
ドクンと大きく一回、夾の心臓が打つ。
その余韻は、一日中残っていた。
しかし、その余韻が徐々に薄れるにつれ、タイムスリップの時間も終わる。
ぼやけ始めた視界が無性に切なかった。
でも何も出来ないことを知っている夾は、ただそれを身体全身で受け止め、感じる。
薫が現れた時のように、フッとビジョンが消え去った。
いや、『フッと…』などという優しいものではなかったかもしれない。
ブツッと、テレビの画面が切れたようにそれは夾を突き放す。
終わった、か……
数秒間目を閉じてから、開く。
そこにはいつも通りのリビングが広がっていた。
朝と同じような感覚に、夾は一瞬不思議な感覚を覚えた。
でもそれもつかの間、目覚ましが鳴り響く。
夾は慌てて寝室に戻り、可愛らしい時計に触れた。
どうやら、予定時刻より数十分早く起きてしまったようだ。