100日愛 [短]




何で…だ?

俺は、時計を持っているだけで、一切触れてないのに…。

何で、止まって――――



「もう、煩いなぁ」



頭が、身体が、自分が…。
動かない。


パニックになることもなく、かといって冷静でもない。


ただ単に、身体のありとあらゆる機械が、その機能を失っただけのように、


―――夾は口を開けていた。




有り得ないこの現実を突き付けられて。





「ちょっと夾くん、何ぼーっとしてるの?」


「……………」




気を失いそうになるほど、頭痛がする。

何が起きているんだろうと、叫びたかった。



「夾くん?」

「…か…おる?」



薫が、いる?


死んだはずの薫が、ここにいるのか?

でもそんなはずは無くて、薫は確かにあの日死んで、俺は100日位一人で過ごしてきた。


「薫…なのか?」

「……酷い。薫のこと、忘れちゃったの?」




そんなわけない。

俺が薫を忘れるわけがないし、
薫がこんなところにいるわけもない。



誰かが否定すれば済む話。

そもそもこんな悪趣味な夢が醒めればいいだけのこと。

返事があったとしても…それは夢。


夢だから、思い出じゃないから…触れても感触はないはずだ……。



夾はゆっくり、彼女に手を伸ばした。



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