八重歯のあの子


「ごめん、えり!」



「いいよ、でも聞いてほしい」


えりは、寂しそうに笑う。



そしてえりは話を続けた。

「中1の時、彼に会ったんだ。

 私は一目惚れ。

 でね、私は告白して付き合えることになった。

 彼はいっつも笑わせてくれて優しかった。

 大好きだった。

 中3の春、高校生活を控えている春休み。

 この県を飛び出して他の県のテーマパークに行った。

 その帰り、横断歩道を渡ろうとしたんだ。

 そしたら、トラックが突っ込んできた・・・。

 あの人は、私の腕を引っ張って守ってくれた。

 でも・・・、彼は・・・」

えりの表情が暗くなる。



「もう、いいよ。

 えり。

 辛いでしょ?」


私は穏やかな表情で言う。


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