ネコ彼。(完)
――――…
大学の講義が終わって、カバンに荷物を仕舞う。
「みっちー。ここわかんない、教えて」
同じ講義を受けてる男子が、ノートを片手にやって来る。
ディスカッショングループが同じだから、よく話すんだ。
「どこ?あーここ、わかりにくかったよね~。えっとね、たぶん…」
ノートを指差して、話し始めようとした時。
「みちる。帰ろ」
「!」
その声に、咄嗟に振り返る。
私の背後から現れた哲平。
哲平とは学部が違うけど、この時間だけ、唯一同じ講義を受けてる。
話し掛けてくるなんて、珍しい。
いつもは授業が終わったら、すぐどっか消えちゃうのに。
きっと気まぐれで声をかけてくれたんだろうな…と思いながらも、嬉しいと思ってしまう私がいる。
私はにやけそうになる顔を必死に引き締める。