ネコ彼。(完)
う、かわいい。
その姿につい見とれてしまう。
哲平が私の視線に気付いて、目が合った。
「ん?」
「あ、ううん!えと、帰ろっか?」
咄嗟に誤魔化す。
見とれてたなんて、恥ずかしくて言えない。
「……あー…今日行くとこあるから、みちるん家行けないや」
「へ?……あ、そっかぁ。わかった」
ちぇ。
さっきは『帰ろ』って言ってたのに…。
喜んで損した。
心の中でちょっぴり拗ねてみる。
こんなことしょっちゅうだし、理由を聞くことはしないけど…いちいち聞くのはウザいと思うし。
……もちろん、本当は聞きたいよ?
でも、聞かない。
哲平が立ち上がり、私を見下ろす。
「じゃあ、行くな?」
「あ、うん」
私はヒラヒラと手を振る。
哲平は頷いて、去っていく。
別れ際のあっさりさも、いつものこと。
――動きたいように行動する。
やっぱり哲平って、気まぐれネコだな…。
哲平の後ろ姿を目で追いながら、そう思った。