甘い声に恋しました。


「俺の事呼んだ?」

「うん、志音くーんって呼ん……って、え?」


私は思わず顔をあげた。

今までずっとうつむいていて、誰が目の前にいるか何て気づかなかった。

けどこの大きな目、長いまつげ、高い鼻、色素の薄い髪。

それにこの声、私は知ってる。




「か、梶原 志音くん?」


もしそうだったらどうしよう。

嬉しすぎて倒れちゃうかも。

違う人だったら恥ずかしいな。


そんな事を思っている時間がとても長く思えた。



「そうですけど何か?」


どうしよう、見つけちゃった。

何て声をかけようかな。

ずっと好きでした。

ファンです。

――声が出ない……。


「え、ちょっと大丈夫!?」


それを聞いた後の私の記憶は無い。




多分、私はこの時恋をしたんだ。

そう、一生分の恋を。
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