この場所で。
「俺、なんか作ってくる。どうせなんも食ってないだろ?」
「あ……」
言いかけて、私のお腹が小さく鳴った。
雅人は少し笑って、部屋を出ていく。
カチッ、カチッ、
飯島と二人、会話もなく時計の音だけが部屋に響き渡る。
どうしたらいいか解らず、ベッドの横の本棚から本を一冊とってみた。
別に読むわけじゃないけど手が寂しくて、
でも携帯は開く気がしないから、ひたすらページをめくる。
時間を稼ぐように、ゆっくりと。
カチッ、カチッ、カチッ………
「………あの、さ」
ようやく飯島が口を開いた。
見ると俯いていて、表情はわからない。
「………ごめん…………」
「えっ?」
とつぜんの謝罪に驚き、手が緩んで持っていた本が静かに閉じる。
「……あんなこと、して……」
なに?
あんなことして、って………悪いと思ってたの?
いつから?
「………なんで謝るの?」
あんたって、そんな奴だった?