この場所で。
仕方ないから授業はサボることにして、キリのいいとこまで作業を続けることにした。
パソコンでデータ入力して、本を片して、次に仕入れる本をリストアップして……
「案外真面目だねぇ」
「何が?」
「図書の仕事」
「あぁ……暇だからな」
「じゃあ遅れても授業に出ればよかったのに」
莉緒は本を手渡しながら、クスクス笑う。
高そうな赤い表紙の分厚いやつ。
それを落とさないように、ゆっくり仕舞う。
「これで最後」
「ん」
作業が終わって時計を見ると、授業が終わるまであと10分。
開けた窓から風に乗って、先生の声や体育館のボールの音が聞こえる。
「……あのさ、莉緒が探してる奴のことだけど……」
話す話題もなかったから、自分から切り出してみた。
けど莉緒の反応は思ったよりも薄く、なんのことだか分かっていない様子だ。
「美術部の、一年の奴」
そう言ってやると思い出したかのように、
「それなら、もういいの」
笑って言った。