この場所で。
窓際で。
「なに見てんの」
放課後に図書室に来てみると、窓際の席に莉緒がいた。
声をかけると、少し体が跳ねてゆっくりと振り向く。
「なんだ、雅人か。びっくりした」
「外、なんかある?」
莉緒がさっきまで見ていたあたりに視線をやると、中庭が見えた。
四階の図書室からだと、高くてけっこうクラクラする。
「……あのベンチ」
不意に莉緒が呟いた。
「あの子が声かけてくれた場所。
……なんなんだろうねぇ?
ただ励まされてハンカチ借りただけなのに、こんなに探しちゃうの。
おかしいよねぇ」
「別に、おかしくなんて」
俺は言いかけて言葉を飲み込んだ。
莉緒のこの困ったような笑顔。
この表情に俺は弱い……。
きっと、莉緒は直樹のことが好きなんだ。
それは一目惚れとかではなくて、その時の少しの時間に感じた直樹の人柄を
かけてくれた言葉や優しさを、莉緒は好きになったんだと思う……。