キミの隣
「…朔ーっ!!」
後ろからする、女の高い声。
…………まただ
あたしの気持ちは一気に、奈良の底へと落とされる。
そう"あの人"が来たんだ、邪魔をしに。
さっくんに行ってほしくないあたしは、さっくんの制服の袖をきゅっと握る。
――…行かないで…
そんな想いも届かず、さっくんは緩んだ顔をして「おぅ。麻希。」と、あたしの"姉"の名前を呼んだ。
そう…さっくんの好きな人であり、あたしの姉。
――――市古 麻希