Quiet man
「そこのお2人、

もし良かったら美味いタダ酒

飲んで、一緒に祝ってやって

貰えませんか? 酒が余って

困ってるんですよ。」



標準語ではあるが

訛りが隠しきれてない。


彼らは同じ様に、その辺に居た

他の見知らぬカップルにも

朗らかに気安く声を掛けている。


こんな気さくさが田舎の良さと

云えばそうかもしれない。



「さーさー、どうぞどうぞ!」

「あ・・。」



あれよあれよと云う間に

2人とも背中を押され、

輪の中に招き入れられた。


そして樽酒のなみなみ入った

枡を皆に振る舞い出すのだ。


彼女も痛み止めがもう必要

なくなったので何の戸惑いなく

それを受け取っていた。



「・・・!」



一口、飲んでみて

俺と顔を見合わせている。

それが驚くほど

美味い酒だったのだ。


聞けば、あそこで囲まれてる

幸せそうなデレデレの新郎は

酒蔵の跡取りらしい。


そして新婦はバツイチの

年上女房なのだそうだ。


よく見ると彼女、

お腹が少し大きいらしい。

さては"デキちゃった婚"か。





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