Quiet man
中に入るとやはり

部屋は色んな酒の匂いがした。


冷蔵庫にあるだけの酒を

飲んだに違いない。


ナギはワインのハーフボトルと

コップの乗ったテーブルに

うつ伏せている。


なんて声を掛けていいのか

解らずにとりあえず、

窓を全開に開け放った。


俺が傍に座っても

ピクリとも動かない。

いや、もう動けないのかも。



「なー・・おばちゃん・・?」



俺の気配を

勘違いしているらしい。

肩に掛けて

やろうとした手を思わず止める。




「神さま・・次はあたしに

生ませてくれるかなぁ・・・?」




「・・・・。」




俺はいったい今まで・・・

彼女の何を _____

何か・・ひとつでも

理解してやっていたのか?


愕然ともなる


その呟きこそ彼女が

見せまいとしていた"傷"だった



ナギはきっと・・

朝子にも黙ってたんだ。

もしかしたら

墓場まで持って行くつもり

だったのかもしれない。




( 耐えられなくしたのは俺だ )




すうと寝息を立て始めたナギの

柔らかな髪を撫で梳きながら


どう云う理屈でだか、

理解は出来ないが



俺は ______

不覚にも涙を落としていた・・。









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