Quiet man
  


気のせいか、さっき入って来た

向こうのテーブルの客。


良く見えないけど

ジッとこっちを見てる様な?



スーツ姿と

そうでない男の2人。



「ナギコさん、

ご指名が入りました。」


「えっ!?」



なんで?

あたし、今日来た新人やのに?

妙な事があるもんだ・・。


案内されたのは先ほど

気になってたあのテーブル。



「ご指名、

有難うございます。私、アッ」


「・・・・。」

「なに、知り合い??」




冷やかな目つきをしていた男は

フっと一瞬、顔を緩ませた。

新幹線に居た、

同じ格好をした・・あの男だ。



「こんばんわ」

「あ・・はい、こんばんわ」



フーッと煙を吐き出し

煙草を灰皿に押し付け、

手の平であたしに

"どうぞ"と着席を促した。



偶然もいいとこやろ、

これって・・。


だって、この界隈に同じ様な

店は腐る程あるから。



「あの、あたし」



取って付けた様な

偶然を疑いつつ、


ホステスである姿を

"ずっと見られていた・・”

という、

気恥ずかしさがあったから。



(上手く立ち回れへん・・。)



しどろもどろしてる私に

先に付いていたホステス達も

顔を見合わせてる。


さっきまでの

"ナギコ"はドコ行った?





< 18 / 254 >

この作品をシェア

pagetop