Quiet man

笑うのではなく、

愛嬌のある

口を一文字に結んで、

またラッキョに手を伸ばす。


ぼりぼりと音を立て、

彼女は忙しなく

ホイホイッ、あたしの

お皿にもそれを入れてくれた。



「コラっ! ラッキョばかり

食ってちゃダメだっつの!」


「うぁーい。」



ヨウちゃんがそう云いつつ

容器のフタを閉める。


伝説のロックバンド・・

希代のべーシストである彼が、

・・・お母さんに見えてきた。



「ココいらまで距離あったろ?

バスかなんかで来たの?」


「・・やたら走った。」


「ゴオ君と・・喧嘩した?」


「ううん。もお、終わった。」




あたしはカレーに入ってた

ヒヨコ豆をスプーンでより集め、

パクリと口に入れる。


彼らの顔を見る事なく、

ひたすら食べ続けるのだ。



「もしかして・・、俺達と呑ん

でたのが原因じゃないよね?」



あの留守録までは普通だった。

彼らと別れてからの事だっのか。



「大丈夫、違うから。」

「じゃ何? 終わったって・・。」


「ん・・もう、エエねん。」

「ナギちゃん・・・。」



あまりに幸せで、

その脆さにも気付かずに

あたしが迂闊だったのだ・・。




_____ "壊れる時"ってきっと、

いつも・・こんなに容易いんよ。

"絶対"なんて無い ______




「お互い"結婚体質"やなかった

んかな。あたしは一回失敗して

るし、彼は恋愛しか知らんし?」


「本気で辞めちゃうの・・?」


「・・・・・・。」



( 言い出しっぺがアレやもん、

辞めるも何もないやん・・。)



コクコク肯き、

"ご馳走様"を云って

スックと席を立つ。


自分の分を洗いながら、

また・・泣けてきた。






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