Quiet man
動揺も手伝ったか、この京都

特有のムシ暑さのせいか眩暈

さえ憶えていた。

まだ吐き足らない・・残ってる、



ただの夏バテならいいけど・・

まだ、

"妊娠"と決まった訳じゃない。



そう気持ちを落ち着かせながら

重たい気持ちと体を引き摺って

階段を上がって来ていた。



( 手品がステージ上、最後に

なってる筈やから居とかな・・、

アカン・・・? エ・・? )



あたしは耳に入ってくるBGMに

足を止めた。

アコースティック・ギター?




・・・"バカな男"と

笑ってくれてもいい

このままじゃ

後悔しそうだ

伝えられずにいることを・・





( こんな曲、知らない・・)




体が震えた、懐かしい歌声に。

でも一度聞いた事のある

メロディラインだった。


でもこれは・・スピーカーを

通している音じゃない・・!?


恐る恐る、階段を登りきると

簡易ステージにパイプイスで

ギターを弾く男の後ろ姿・・。





・・・眩しすぎて 

届かないのさ

こんなに近くにいるのに 

触れることすら 

かなわない・・・・






「あ・・・・。」





・・・shining baby 

どうか 許しておくれ


歪んだ愛を

あげるつもりはなかったさ・・






向こう側に座ってる観客の

視線があたしに集中した・・。



( この歌は・・あの時の)




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