Quiet man
「お疲れさまでした」

「おつかれ」


やはりいつもの通り、

彼は帰り支度を済ませて早々に

ライブハウスを後にした。


ギターを抱えたまま酒屋に入り、

バーボンを1本買う。


コインパーキングまで

車を取りに行くと

入り口に差し掛かった所で

携帯が鳴る。


彼女からのメールだった。

車に乗ってから開いてみる。



『 お疲れ様!

今家に着きました。

今日は最高の夜を有難う。

貴方を目撃出来て光栄でした。

今度、

どこのラーメンが美味しいか

教えて下さい。  ナギ 』



読み終えると自然に顔が綻んだ。


滅多に打つ事のないメールに

時間を取りながら打ち返してみる。



『こちらこそ有難う。

ところで

メシはもう済みましたか?』



送信して、

煙草に火を着けて待つ事数分。


ピロピロ。


聞き慣れない音でメールを開ける。



『実は今、

冷蔵庫をアサってた所です。』


『何かありましたか』



調子づいて打ち返す。




『冷奴、

枝豆、さしみ蒟蒻があります。』


『呑み助の冷蔵庫ですね、

一緒にバーボンなどいかが?』







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