Quiet man
俺なんかに

いいのだろうか???


そう思いつつも、

神足は開いた便箋に

ナギの字を見ていた。



『 朝子へ。


もう気にしないで。

朝子と彼がこうならなくても

きっとあたしは

正木と別れていたと思うよ。

跡取りが大事な家で

あたしじゃ責任を

果たせそうになかったし。


あの人は意外と優しい人だよ。

これから暑くなるけど、

無理しないで

元気な赤ちゃん生んでね!


・・以上、ナギでした。』




( バカだよ、お前も・・。)



読んだ後、

喉の奥からグッときた・・。




やはり友達に

ダンナを寝盗られたって事か。


目の前の妊婦のお腹は

どうみても

五ヶ月にはなっているだろう。


文面は標準語で、

彼女が気持ちにもムリをして

いる様な印象を持ってしまう。


俺は傷口に塩を

擦り込む様なマネをした・・と

神足は手紙を持ったまま

呆然となった。



「バチがあたったんですよね、

子供が女の子だって解った途端、

彼、急に冷たくなっちゃって。」


「まさか・・それ、相談しに?」


「彼がどうも

コチラに来ている様なんです。

もしや、一緒に

居るんじゃないかと思って。」



( 馬鹿な・・でも推測通りなら

ダンナもダンナだな・・。 )



嫌な空気に絶えられなくなり、

彼は車を走らせた。

一刻でも早くこの女を

車から降ろしたい一心で。



「う・・ぶっ。」



そしてホテルが目の前に現れた時、

突然。

隣の女は口を押さえて青い顔だ。



「・・・・・出そう。」


「酔った・・!?

それとも、つわり!?」



頼む! 車の中だけは

カンベンしてくれ・・!


そう願いながら大至急で

パーキングに車を入れるのだった。



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