Quiet man
今更、不妊治療の事を

知られるとは・・。


声を震わさない様にするのが

精一杯で和祇は行き場のない

視線をテーブルに落としてる。



「相談も途中で止めた、

だってもう _______ 」


「ダメだったから・・・か?」


「ぁ・・・。」



声に成らない声。


テーブルクロスを

掴んでた手を

彼が唐突に握った。


思わず顔を上げれば

"何故なんだ"と・・

かつてない、懇願するかの

元・夫の目が訴えている。


和祇は悟って脅えた。


もう・・

思い出させないで欲しかった。


悲しみにのた打ち回り、

途方に暮れ・・ただ自分の体を

呪い続けた、あの惨めな日々を。




「何で、黙ってた・・!」


「その二日後・・朝子が

貴方の子を妊娠したって・・

本人から聞いたから・・。」





"・・ごめんな、和祇ちゃん。

正木先生のこと

私、やっぱり・・

忘れられヘんかってん・・"



___ 打ちのめされたあの日

あたしが "流産" して

二日後の事だった _____




もう

笑うしかなかった。




神様は





妻であるあたしより


朝子に彼の子を


生ませる事にしたらしいと。







あたしの子はこの世に


必要なかったとでも云うの___ ?









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