Quiet man
けれど、

時々顔を合わす程度の夫であり

医者でもある筈のこの男は

あたしの体の異変になど

気付く事もなく・・。



「流産したって云うたら

克哉は・・あたしの所に戻って

来てくれたん?」


「!」


「浮気はもう知ってた・・。

復縁なんて無理。

有り得へんよ。」



そう・・、

あたしが嘆き悲しんでいる間

この男はせっせと

浮気にせいを出していたのだ。



「・・和祇。まだ食事中だ。」



立とうとして

テーブルに突いた手を掴まれる。

・・こんな必死な彼を見た事がない。


素直に"行くな"と云えない

プライドの高さ。

それすら懐かしい気がした。



「兎に角、座れ」



仕方なく浮かせた

尻をもう一度イスに降ろすのだ。



「俺はセックスに自信が

持てなくなってたんだ。

・・何故だか解るか?」



こんな静かな所で堂々と

そんな会話が出来るのは医者か、

ただのスキモノのどちらかに思えた。





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