Quiet man
夫であった正木克哉は

院内でもモテ男であった。


結婚前、

彼と寝てみたいと

ほざいていたナースらが

結構いた事を

和祇は良く知っていた。


その彼を

自信喪失させたのが

自分だと云うのか?


だがそう云われれば思い当たる

フシがない訳ではない。



「終わったアトのお前は、

いつも寂しそうに笑った。

あれは・・なぜだったんだ?」



彼女は額を手で覆い

大きな溜息をつく。



「気付いてなかったん・・? 」



誰かこの男に

何か云ってやってくれ!

と、さえ思ったり。

普通、解りそうなものだった。




「貴方は子作りの事しか

考えてなかった。繁殖馬にでも

なった気分で抱かれるって

どんな気持ちか解る・・? 」



肉や魚類は食べさせないし、

農家でもない

彼の母親は

野菜ばかりを送り付けてきた。


つまり、産み分け狙いである。

どうあっても

男の子が欲しかったらしい。





「仕方ないんかなって・・

諦めて笑ってたんよ。・・は! 

も、もしかして朝子にも」


「した。」


「・・・あの、ヘンな体位?」


「うむ。」




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