Quiet man
「凄いカゲだ」
「あのまま繭になるかも」
「ふ化すると思う?」
「「 ・・・・。 」」
「「「 "蛾"に五百円っ! 」」」
そんな様子に
ぷっと吹き出した男が
大きな帽子を揺さ振って
ようやく立ち上がった。
「あのねー、ふ化する迄
待ってられると思う?」
ノートを筒状に丸め、
フテる彼の耳元に当て
小声で話し掛けるのだ。
「何で呼ばれたか解ってんの?
起きろ、
あんたの出番だよ・・!」
「・・・。」
「後で
聞こうじゃないの、エエ?」
「・・・!」
スクッ! と立ち上がり、
周りを驚かせる。
頭をパラッと手で払い、
ギターを手にした。
そして、何事も無かったように
自分のパートをこなしてる。
「ゴォ君、内気なんだよね。」
フゥと溜息でまた座り直す彼。
「ツボを押さえてると云うか。」
「餌付けできてるって言うか。」
「ちょっとォ、
間違ってるぞ、ソコっ!
俺、相方だし! 忘れてなぁい?」
今日のこのスタジオの主は
そう云ってべース抱えたまま
足をバタつかせ口を尖らせてる。
小田ヨウジロウ、31歳。
底抜け明るい、
確かに彼の相棒である。