Quiet man
「ごるァ!
ホステスが本気で
酔っ払ってどうスンじゃっ!」
此処は、
銀座 "ファタ・モルガナ"の
控え室のトイレ。
そこで喝を入れているのは
ママである馬渕ミサエ、42歳。
猛烈な声を上げて便器に
しゃがみ込み、ゲロを吐く若い
ホステスの背中を摩っていた。
「ママー、
品なくなってるでー。」
「るさいっ!」
まだ茶化す元気が残っているだけ
マシである。
「レモン水よ、ちょっと控えめに
して貰ったから。」
彼女をソファに座らせて
グラスを手渡した。
女の源氏名はナギコである。
ここでは新人、その中でも
最年少ではあるが恐らく
一番図太いと云われている。
「まあ・・イヤな客をギャフンと
云わせたのはさすがだけど・・
ねえ、何かあった?」
「んー・・。いろいろと。」
「何よ・・!」
「産婦人科で
待ち伏せされてた・・。
んで・・復縁したいって・・。」
ミサエの溜息が大きく出た。
手の甲で
目を覆い隠すナギの前髪を
クシャと撫でてやる。
「断ったんでしょ・・?」
「ウン・・、断った・・。」
「そ! じゃあ・・今日の働きに
免じて少し休んだら帰りなさい。
いいわねって・・
もう寝てしもたんかいっっ!!」
ハタ!と見ればヒールを脱ぎ
ソファに丸まって
寝息を立て始めていた。
クー、と
鼻を鳴らしたのについ笑う。
「ったく、しょーがないコ。」
呆れてそう云いながら
傍にあった
膝掛けを被せてやり、
また店へと戻るのだ。
「あらら?
まあ!! この間はどうも♪」
そしてまた現れた新たな客に、
極上の微笑みでたっぷりと
愛想を振り撒いてるのである。
ホステスが本気で
酔っ払ってどうスンじゃっ!」
此処は、
銀座 "ファタ・モルガナ"の
控え室のトイレ。
そこで喝を入れているのは
ママである馬渕ミサエ、42歳。
猛烈な声を上げて便器に
しゃがみ込み、ゲロを吐く若い
ホステスの背中を摩っていた。
「ママー、
品なくなってるでー。」
「るさいっ!」
まだ茶化す元気が残っているだけ
マシである。
「レモン水よ、ちょっと控えめに
して貰ったから。」
彼女をソファに座らせて
グラスを手渡した。
女の源氏名はナギコである。
ここでは新人、その中でも
最年少ではあるが恐らく
一番図太いと云われている。
「まあ・・イヤな客をギャフンと
云わせたのはさすがだけど・・
ねえ、何かあった?」
「んー・・。いろいろと。」
「何よ・・!」
「産婦人科で
待ち伏せされてた・・。
んで・・復縁したいって・・。」
ミサエの溜息が大きく出た。
手の甲で
目を覆い隠すナギの前髪を
クシャと撫でてやる。
「断ったんでしょ・・?」
「ウン・・、断った・・。」
「そ! じゃあ・・今日の働きに
免じて少し休んだら帰りなさい。
いいわねって・・
もう寝てしもたんかいっっ!!」
ハタ!と見ればヒールを脱ぎ
ソファに丸まって
寝息を立て始めていた。
クー、と
鼻を鳴らしたのについ笑う。
「ったく、しょーがないコ。」
呆れてそう云いながら
傍にあった
膝掛けを被せてやり、
また店へと戻るのだ。
「あらら?
まあ!! この間はどうも♪」
そしてまた現れた新たな客に、
極上の微笑みでたっぷりと
愛想を振り撒いてるのである。