Quiet man
あの先生が・・克哉の後輩?
眼鏡をキラリと光らせて、
機械的な物言いをする、
産婦人科のドクター・・。
そんな個人情報を漏らすとは
なんて無神経な男であろうか。
それって・・医師間では
許される行為だったの・・?
『・・貴方の場合、子宮だけが
成長していない様ですね。』
( 体は立派に育ってるのに? )
『このままだと不妊、
もしくは着床しても
流産の可能性が・・。』
( じゃあ・・
ちゃんと治療すれば・・? )
『・・今回は残念でしたね、
まだこのまま
治療を続けますか_____ ?』
なによ、インチキ・・・・!
「・・・!」
目が醒めた途端、
ツー・・と涙が落ちていた。
夢だけど・・過去の現実。
せき切ったかに
後から後から涙が零れて。
「うっ・・、ひっく・・・」
暗闇があたしの涙を
隠してくれてる。
今のウチに
泣いてしまおう・・。
「っく・・!? ・・誰!?」
そのザラついた指は
手探りするように
横から伸びて来て・・
彼女の濡れた目尻に触れた。
ぱち! と云う音と共に
明るすぎない灯りが燈る。
「なんで・・?」
一瞬、光に
目を細めたが自分を覗き込む
心配そうな
神足の顔が見えて驚くのだ。
「店に行ったらナギが
酔い潰れてて・・送ってやって
くれって頼まれた。」
「え・・だからここは」
良く見れば
自分のベッドじゃないし部屋も
見覚えがない。
酔った頭で考えを纏める。
「俺んち。ママが鍵、
探してくれたけど
見つかんなかったから。」
「だからって一緒に」
「ごめん、ソファないんだ。」