男の子、怖いです




小学校卒業と同時に親が転勤し、わたしは誰も知り合いがいない中学に入学することになった。




ここなら、男の子嫌いを治せるかもしれない……。




わたしはそう思って、思い切ってサッカー部のマネージャーになることにした。


マネージャーなら、否が応でも男子と関わらなきゃいけないから。




しかし、そんな希望は脆くも崩れ去る。




入部してすぐの、放課後のことだった。




「ねえねえ美白ちゃん」


「はっ、はい?」


1人残って、ボールを洗っている時。


話しかけてきたのは、3年生の男の先輩だった。


「そのボール、使いたいんだけど」


「あ、す、すみません、どうぞ」


洗っているボールの1つを手渡した。


その手を引っ込めようとした時、先輩がわたしの手をぎゅっと握った。




「!?」


「冷たいね。水、冷たかったでしょ」




触られた所から、どんどん鳥肌がたった。


男子と話すのが精一杯なのに、触られるなんて、とてもじゃないけど吐きそうだった。




「あ、あの、大丈夫です」


手を引っ込めようとしても、先輩はなおさら手を握って離してくれない。


「美白ちゃん、かわいいと思ってたんだ、ずっと……」


その言葉で、余計に体に鳥肌がたった。


こんなわたしがかわいい?
そんな訳、ないじゃない。




「俺と、付き合ってくれない……?」




そしてこの言葉で、体が石になった。


嘘……でしょ……。


そんな訳、ない。


何より、入部の日にマネージャーの先輩からいわれた、
《部内恋愛禁止》
という言葉が頭を独占した。


こんなことがバレたら、またいじめられる…!


動かないわたしに勘違いをしたのか、先輩の唇が近づいてきた。


体が、動かない。


誰か、そう思ってまわりを見回しても、もう暗いグラウンドには誰もいなかった。




ヤメテ……




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