男の子、怖いです
「あっ、先輩!」
誰もいなかったグラウンドに、人影が入ってくるのが見えた。
その声を聞いて、あわてて先輩がわたしから離れた。
「先輩も残ってたんですね!俺は忘れ物しちゃって!あ、マネさんもいたんすね!お疲れっす!」
同じ1年生の飛大(ヒロ)くんだった。
何も知らずニコニコと笑う飛大くんに、先輩は苦い顔をした。
「お、おう…、お疲れ。じゃ、じゃあ俺帰るから!じゃあな」
先輩はそれだけ言って、そそくさと部室に戻っていった。
なんだったの、あれ…
わたし、からかわれてただけ?
そう思うとぼっと顔があつくなって、嫌悪感がこみあげてきた。
「………わたしも帰るので、さようなら」
「おぉ、じゃーな!」
わたしはそう飛大くんに言って、その場を離れた。
その翌日、わたしは部活を退部した。
男の子に対する嫌悪感で、とても部活どころじゃなかったから。
そして、わたしは高校1年生になった。
男の子と話すことさえ、ほとんどできないまま。