男の子、怖いです
体育の移動のとき。
「美白、とろいっ!はやくしないとチャイム鳴るよ〜」
「チャイムに間に合わないとずっと筋トレなんだから!やばいって」
何事もとろいわたし、奈央に左手、小雪に右手を取られて廊下を全力疾走中です。
「む、無理……。足動かないって……」
そう叫んだそのとき、
どずんっ
曲がり角で誰かとぶつかった感触。
恐る恐る顔をあげると、そこにいたのは男の子、しかも……
中学のとき、同じサッカー部だった飛大くんだった。
「あ……」
どこか気まずそうな顔をする飛大くんに、わたしはごめんなさい、とだけ叫んで駆け出した。
「ちょっと、美白!?走るのはやいっ」
男の子は苦手、さらに苦手なのは中学が同じだった男の子、さらにさらに苦手なのは、部活が同じだった男の子。
すぐに部活をやめたわたしを、良く思ってるはずなんてないから。
振り返らなかった。
だから、飛大くんがどんな顔をしているかなんて、わからなかった。