男の子、怖いです
ケータイを出せば、離してくれるの?
わたしは急いでポケットからケータイを出した。
男の子に触られてるなんていう、嫌悪感から逃れられるなら何だっていい…!
わたしのケータイを受け取ると、男の子は満足げに手を離した。
やっと、生きた心地がする……。
酸素ってこんなにおいしいのね……。
「はい」
男の子はニッコリと笑いながらケータイを差し出した。
わたしはそれを受け取ると、猛ダッシュで廊下を駆け出した。
はやく離れなきゃ!!
「美白ちゃん!」
またあの声優さんみたいな声が聞こえて、わたしはちょっとだけ振り向いた。
「電話帳のら行、見てみて」
男の子は手を振りながらそう言った。
あたしは男の子から十分な距離を取ってから、電話帳を開いてみた。
━━━━━━━━━━━No.36
琉依
ルイ
電話番号:080---
メール:ruing.---
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そこにあったのは、さっきの男の子のプロフィールだった。
お父さん以外の、初めての男の子の電話帳に、あたしは不思議と嫌悪感を抱かなかった。
変な、男の子。
その、変な男の子と、あたしは30分後に再会することになる。
小雪と来た、イベント会場である体育館で。
「このイベントが見たくて男子校まで来たんだあ〜♪もう、超やばい〜」
テンションが上がっている小雪の横で、あたしは何があるのかとドキドキしていた。
『皆さん、お待たせしました!このイベントのためにやってきた女子の皆さん、わざわざ男子校にありがとうございます(笑)』
司会らしき男の子が出てくると、一気に周りの女の子達がキャーキャー言い始めた。
なんなのよ……?
『では、大人気高校生モデル、琉依くんの登場です!』
ルイくん…?
さっきの人と同じ名前だ…。
そしてわたしはステージに出てきた人を見て、愕然とした。
『皆さんコンニチハ〜!琉依です♪』
キャーキャーうるさい歓声も、隣の小雪がわたしの腕をぐいぐい引っ張るのも、全然わからなかった。
だってステージの上にいる大人気高校生モデル琉依、はさっきわたしが会った男の子だったんだから。
ポカンと口を開けてステージ上を見ているわたしを見つけたのか、琉依くんはこう口を動かした。
『惚れちゃった』
………………そんな風に動いたなんて、わたしの気のせい……?