もしもわたしが許されるのならば
1年Aクラス。

「今日からここが、わたしの教室……」

心機一転、いろいろな思いを巡らせながら、敷居を跨ごうとしたとき……

「月園(つきぞの)さん」

誰かがわたし達を呼びとめた。

「お久しぶりです」

「もしかして、調君?」

「はい、水泡調(みなわしらべ)です」

そこにいたのは、かつて隣に住んでいた幼馴染みだった。

どうして?

調君から離れるためにこの高校を選んだのに……

「ところで、そちらの方は?」

調君の後ろには、着物を着た女の人が立っていた。

「どうも、初めまして。木通(あけび)です」

「遠縁の親戚で、僕の後見人です」

「初めまして。失礼ですが、もしかして関西の方ですか?」

「あら、やっぱり分かってしまいます?京都出身で、嫁ぐまで向こうにいましたから。なかなか訛りは抜けなくて」

「そうなんですか……」

それから、お母さんと木通さんはお互いの故郷について話していた。

「結惟(ゆい)、わたしは少し木通さんと話したいことがあるから、先に調君と教室に入ってて」

< 4 / 23 >

この作品をシェア

pagetop