キオクノカケラ
「遅いですよ頭領」
「悪いね、なるべく急いだつもりなんだけど」
そんな軽口を叩きながらも、ざっと辺りを見回す。
全部で40…いや50くらいか。
20代前半の男と、まだ高校生のたった2人に対してこんなに集まるなんて、
たいしたおもてなしだぜ。
けど、オレの敵じゃないね。
オレは口元に笑みを浮かべると、ポケットから2つ手榴弾を取り出し
金具を口にくわえる。
「章、1分だ」
「了解」
目で合図を送り合って、同時に金具を外す。
そしてそれを一斉に別々の方へ投げた。
ドォンッ
すごい爆発音がしたと思ったら、すぐにもくもくと白い煙が辺りを包む。
オレと章は素早く息を吸うと、袖口で鼻と口を覆った。
向こうの奴らは慌てて煙から逃げようとしているけど、
もう遅い。
………56
57、58、59、60……
「ふぅ……見事に倒れましたね」
「あぁ、楽勝」
さっきまでオレたちを囲んでいた総勢50人あまりの黒服の男たちは
全員地面に倒れていた。
オレたちを甘く見過ぎたみたいだね。
「あと当分3日は起きないだろうな」
「ええ、この睡眠ガス入り手榴弾は強力ですから」
そんな会話をしながら拳銃をすべて回収する。
どっさり袋に入った銃の数は、見た感じ人数の3倍はある。
どんだけだよこいつら…。
小さく息を吐くと、章の方を見る。
「っ!!」
するとそこには、信じられない光景があった。
……章が
章が、さっきまで倒れてた奴の一人に拳銃を突き付けられている。
「章……お前…」
「……すみません、頭領」
油断しました……。
両手を上げてそう呟く章の声は、今まで聞いたことのないくらい小さかった。
まさか
あの睡眠ガスを吸って平気な奴がいるなんて…。
予想外の出来事に、それに対処しきれない自分に拳をぎゅっと握り締めた瞬間。
後ろからふいに声を掛けられた。