キオクノカケラ

一体何が起きたんだろう…。

辺りを見ようにも、真っ暗で何も見えない。

その暗さは自分の手を目の前に出しても、影すら分からないほど。

困ったな……。

とりあえず、膝をついて立ち上がると、恐る恐る前に手を伸ばした。

すると、ちょん、と指先に当たる冷たい感触。

しっかりと手のひらをつけると、その冷たさが手のひら全体に伝わる。

鉄…か何かかな。

首を傾げて、壁に手をつけたままゆっくりと歩く。

すると何センチもいかないでつま先が壁にぶつかる。

それを4回ほど繰り返して、ようやくここは四角い部屋だということが分かった。

部屋とはいっても、ちょっと広いロッカー程度の広さだけど。


「で、どうやって出ればいいんだろう?」


そもそも出口があるのかも怪しいこの部屋で、私は外に出ることができるのか。

両手を組んで何かいい案がないか考える。

でもあまりいい考えは浮かばず、仕方なく全ての壁に体当たりしてみることにした。


ドンッ!


ドンッ!


ドンッ!


ドンッ!


……………。

だめだ…。

本当に出口がないのかな?

どうしよう。


「はぁ……」


壁に背を預けて、そのままずるずると座り込む。

足を自分の元に引き寄せて、体育座りをするようにして顔を伏せると、


「…せ……んだ…ろ…」


「……は………よ」


外から小さな話し声が聞こえてきた。

結城くんかも!

壁に耳をつけてよく耳を澄ませると、さっきよりもはっきりと会話が聞こえてくる。


「さて、詩織はどこにいるんですか?」


「…もう分かってるんじゃないかい?
ここに詩織は、いないよ」


……え。

私?!

どうして私が出てくるの?

ていうか、いますけど!


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