キオクノカケラ
さらに壁に体をくっつけて、会話の続きに意識を集中させる。
「ふ、はははははは」
「何がおかしい」
「いえ、すみません。
・・・・
ただあまりにも、計画通りだったもので」
この声…さっき目が合った人の―――。
―――章さんを撃った人の声だ。
計画通り?
それって一体…。
どうやら、そう思ったのは私だけではなかったらしい。
「どういう意味だい?」
いつもより若干低い結城くんの声が向こう側に響く。
対して男の人は、さほど焦った様子もなく静かな声でそれに答える。
「そのままの意味ですよ。
これは全て僕の計算のうち。
詩織は、ここにいます」
「ッ……!」
どくんっ、と一瞬心臓が跳ねたような気がした。
思わず息を殺して手を握る。
「……いないよ」
「います」
「どうして、そんなことが分かるんだい?」
「…分かるんですよ、僕には」
確かに私はここにいるけど、どうして彼にそれが分かるの?
ここへ来る前に目が合ったから?
でも私がここに来るとは限らないじゃない。
もしかしたらもう、逃げてるかもしれないのに。
どうして彼に分かるの?
どうして、
自信を持って断言できるの…?
答えはひとつ。
彼は、私のことを知っている。