キオクノカケラ
…どういうことだ。
あいつは、どうしてそんなに自信ありげなんだ?
詩織は車のトランクの下に隠れているはず。
何があっても絶対出るな、と言ってある。
仮に出たとしても、この倉庫はオレにしか開けられない。
入れるわけがない。
なのにどうして……。
「その、後ろのロッカー」
ふいに柏木が指差す。
それを辿るように後ろを向けば、案の定誰の姿もなく、
ただ大小の異なる無数のロッカーが、無表情に立ち並んでいる。
そのたくさんのロッカーの中で、柏木はただ1つのロッカーを指差していた。
「これが、どうかしたのかい?」
「そこに、詩織はいます」
「なっ……」
そんな馬鹿な!
どうして倉庫の中の、しかもロッカーの中に詩織がいるんだ。
「開けてみれば分かります」
「…………」
本当にいるのか…。
いや、いるわけない。
入り口をくぐったのは、確かにオレと柏木の二人だけだったはず。
絶対にいるはずないと、断言できるのに、オレは頬に冷たい汗が伝うのを感じた。
大丈夫……。
きっと詩織はいない。
大丈夫だ…。
そう自分に言い聞かせて、ロッカーの横にあるパスワードを入力すると、
オレは静かに扉を開いた……―――。