キオクノカケラ
大丈夫…結城くんは負けない。

私も、足手まといにならないようにする。

大丈夫。

大丈夫…。

何度もそう自分に言い聞かせて、しっかりと目の前の彼を見据える。

すると、ばっちり彼と目が合った。


「詩織……やっと会えた」


「え…?」


「ずっと…ずっと、探してたんだ」


「私を…?」


彼はこくりと頷いて、銃を下ろす。

そして片膝をついて、目線を私に合わせる。

そのとき、結城くんが私を庇うように手を横に出してくれたけど、

彼の瞳はとても優しくて、警戒心は抱けなかった。

そんな彼は、悲しそうに眉をひそめると、小さく呟くように声を発した。


「詩織、ごめん…まさかあんなことになるなんて、思わなかったんだ……」


「あんなこと…?」


「詩織のお祖父さん…至峙(ゆきじ)さんのこと…」


「おじい…さん…?」


何のことを言ってるの?

この人は、私のお祖父さんのことまで知ってるの?

記憶を失う前の私と、一体どういう関係なの?

ちらりと結城くんを見れば、向こうも私を見ていて、視線が合った。

すると、一瞬気まずそうに顔をしかめて視線を逸らすと、真剣な面差しで目の前の彼を見据えた。


「思わなかった、なんてよく言えるね。
その証拠を隠滅したのは他でもない、あんたじゃなかったっけ?」


「…………」


いつもにはない、低い声で問う結城くん。

いや、問うというよりも、これは確信をもって言っている言葉に聞こえる。

相手が黙っているのも、きっと本当のことだから。

ということは、この男の人は私のお祖父さんのことを知っていて

しかも何かお祖父さんに関する証拠を隠滅したってこと。


「でも証拠って一体何の?
あなたも、私のことを知っているの…?」

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