キオクノカケラ

「あ、あの…私……」


「僕では、駄目…ですか?」


「いえ、その…そういうわけじゃ…」


「でしたら僕の求婚を、受けてくださいますよね?」


哀しげに揺れ動く瞳に、思わず頷いてしまいそうになる。

でも…駄目。

頷くことはできない。

だって私は……。


「……ごめんなさい」


「なぜです?」


私は……―――。


「結城くんのことが…




好き、なんです」




頬が急に熱くなったのが分かる。

私…何言ってるんだろう。

そっと隣を見ると、頬をほんのり紅く染めて、こちらを凝視している結城くんとばっちり目が合った。

それに慌てて目を逸らすと、目の前の彼が小さく呟いた。


「…そうですか………残念です」


「ごめんなさい…」


寂しそうに笑う彼の顔を見ると、なぜだか胸が痛んだ。

あれ…私、前にもこの人のこんな顔見たことある……。



ズキンッ



「っ……」


頭に鋭い痛みが走る。

それと同時に頭の中で流れる映像。







『あの、私…健斗のこと……』


『……ごめん、詩織。
それ以上の言葉は聞けない』


『どう、して…?』


『僕も、詩織のことは好きだけど

・・・・
君の好きとは違うから…』




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