キオクノカケラ
まっすぐにオレを見つめる、若草色の瞳。
その目は真剣そのもので、心の底からオレの身を案じてくれているのだと分かる。
「オレは……」
すぐに追いかけるよ。
そう言えばいい。
そうすれば、渋るだろうがうまく丸め込めば納得するだろう。
でも言えない。
丸め込んでしまえば、彼女のことを裏切るような気がして…。
そう躊躇っている間に、詩織はオレにキーを差し出した。
「…やっぱり、これは受け取れない」
そして、力強い笑みを浮かべて、オレの手を握った。
「逃げろだなんて言わないで。
一緒に、帰ろう?」
「詩織……」
オレも詩織の手をぎゅっと握る。
その時――――。
パンッ
「ッ…!」
倉庫中に響く乾いた音と共に、足に走る激痛。
勢いよく柏木を見れば、手に持つ銃から煙をあがっていた。
彼はこの場に似つかわしくない満面の笑みを浮かべると、
静かに、それでいて恐ろしいくらい冷静に問いかけた。
「最期のお話は終わりましたか?」
「…まだまだ、話足りないね」
「そうですか…でも残念ですね。
そろそろ時間です」
「…………」
どうする…。
あいつは完全にこっちの動きに警戒している。
銃を取り出すのはまず不可能。
かといってこのままじゃ、間違いなく撃たれるだろう。
オレが死んだ後で、あいつが詩織を殺さない保障はない。
絶対、絶命…か。
奥歯をギリ、と噛み締めたその瞬間。
目の前に誰かが立ちふさがった。