キオクノカケラ

初めて聞いた健斗の怒鳴り声に、ビクリと体が震えた。

どうして健斗が結城くんを殺さなければならいのか。

私には皆目見当もつかないけど、

彼の瞳に浮かぶのは怒りでも、憎しみでもなく、



悲しみしか見えなかった。


「……どうして結城くんを殺さなくちゃいけないの?」


「…そんなの、彼を憎んでいるからに決まって―――」
「嘘」


「っ!」


静かに彼の言葉を遮れば、今度はあからさまに目を見開いた。


彼は嘘ついてる。

本当に憎んでいるんだったら、最初に足じゃなくて急所を撃つはず。

今だって、私を撃つなりなんなりして彼を撃てばいいじゃない。

それをしないってことは、



理由は他にある…!



それを聞き出して、説得して、早く結城くんを病院に連れていかないと…。


「結城くんに怨みがあるなんて嘘でしょう?

お願い、本当のこと教えて…?」


「僕は…嘘なんて―――」


「……だったら、どうしてそんなに辛そうな表情(カオ)してるの…?」


「!」


「何か他に、理由があるんでしょ?」


お願い健斗…。

答えて……。

彼は瞳を揺れ動かしながら、しばらく黙っていると、

意を決したようにそっと口を開いた。


「………そいつを殺さないと、あいつが…っ、僕の大事な人が、殺される…」


「…………」


「だから、僕はそいつを殺さなきゃいけないんだ」


覚悟と決心を秘めたその瞳は、とても冷たい光を放っていて、思わず一歩後ろに下がった。


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