キオクノカケラ
おいおいおいおい…。
まさか抱きつくとは思わなかった。
あとで柏木に一発やってやらないといけないかもね。
それも、オレの体力がもったらの話だけど……。
正直、結構やばい。
銃を構えている手が震えて、視界もぼやけてきた。
自分でも分かってる。
もう…限界が近づいてきてることぐらい。
「っ…くそ……っ」
体が一瞬軽くなったような気がした。
その後すぐに、全身に鈍い衝撃が走る。
「結城くん!!」
詩織が泣きそうな顔でオレに駆け寄ってきた。
そこでようやく気づいた。
あぁ…オレ、倒れたのか……。
情けねぇ…。
自嘲気味に笑うと、ふと周りに赤いものが広がっているのが見えた。
これ…全部オレの血か……?
暖かい…。
「結城くん…!
結城くん!しっかりして!!」
「詩織…オレは、大丈夫……だから…」
「全然大丈ぶじゃ……い…よ!!
は……く、…ん…に!!」
あー…本格的にやばいかもしれない。
詩織が何言ってるか分かんねぇ…。
そんなことを考えていると、体がゾクリと震えた。
今度は寒い……。
このままオレ、死ぬのかな…―――。
だんだんと瞼が閉じかけてきたとき、今度は本当に体が浮いた。
驚いて少し目を見開くと、目に付いたのは誰かの背中。
「……!!こ……ら…は?!」
「………!」
詩織と柏木が何かを叫んでいるのが聞こえる。
オレ、柏木におぶられてるのか…。
…野郎におぶられるなんて、
ますます情けねぇ……。
そこでオレの意識は、プツリと途絶えた。