キオクノカケラ
「柏木さん…あなたでは駄目です」
「えっ…」
「どうしてですか!?」
健斗が何か言うよりも早く、私は叫んでいた。
どうして?
健斗はB型なのに。
章さんは一度私を見てから健斗に視線を移すと、真剣な面持ちでたずねる。
「柏木さんは確かにB型ですが、“Rh+”ですよね?」
「え…あぁ……確か」
それを聞いて章さんはほんの少し顔を歪めた。
その表情と会話で、嫌な考えが頭をよぎる。
まさか…―――。
「残念ながら頭領は、“Rh-”なんですよ」
まさに嫌な予感的中。
気がついたときにはもう、章さんの腕を掴んでいた。
「誰か…誰か他にRh-の人はいないんですか?!」
「……確か隼さんがB型のRh-だったと思いますが…―――」
「ならお願いして来てもらいましょう!
連絡先を教えてください!!」
「詩織さん、落ち着いてください。
この病院から隼さんの家まで最低1時間はかかります。
間に合うか分かりません…」
1時間…。
確かに長い。
それまで結城くんの体力がもつか分からない。
でも……っ。
「…結城くんと約束したんです。一緒に帰ろうって……―――。
……きっと大丈夫です。
たとえ1%の確立でも、可能性がある限り諦めたりしません」
「詩織さん……」
力強く笑ってみせれば、章さんは少し驚いていた。
それから彼は優しく微笑むと、携帯を差し出す。
「連絡をお願いします」
「はい!」