キオクノカケラ
第2章
「すっごーい!」


結城くんに連れられて着いたそこは、超高級の高層マンションだった。


ロビーにはキラキラ光るシャンデリアがぶら下がっていて

ピカピカに磨きあげられた大理石の床

ソファーがあって

プラズマテレビがあって

それから……

うぅ…頭ぐるぐるしてきた


「詩織?ほら、行くよ」


「あ…うん」


差し出された手をとってエレベーターに乗り込む。


結城くんの部屋は50階…最上階。


……高層マンションの最上階ってすごい高いんじゃなかったっけ?

結城くんってめちゃくちゃお金持ちなんだ。


「そんなとこに立ってないで入りなよ」

「お邪魔します」


おずおず中に入ると、中もすごかった。

4LDの広ーい部屋。


「すごい…」


「ふふ…お前は今までどんなところに住んでいたんだい?」

「えっと…」


悪戯っぽい顔で笑う彼は、年相応に見えた。

結城くんもこんな顔するんだ。


「頭領、例の件で会議があるそうです」


いつの間にそんな情報を仕入れたのか、章さん…という人は

結城くんに言った。


「会議?パス」


「頭領っ!!」


即答した結城くんに章さんも焦ったようで

冷や汗をかいて彼に駆け寄る。

何やら説得しているようだけど、

結城くんはぷいとそっぽを向いて、まさに聞く耳持たず。


だんだん章さんが可哀想に見えてきた私は、助け船をだすことにした。


「結城くん、行ってきなよ。大切な会議なんでしょ?」


「そうですよ!」


「……けど、詩織をひとりにするわけには…」


まだ行きたくない様子の結城くんに、章さんも深いため息をつく。


「それなら心配いりませんよ」


ほら、と親指でドアのほうを指差す。

その向こうには、知らない女の子がふたりと、男の子がふたり立っていた。

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