キオクノカケラ


詩織はオレの服を掴んだまま、強く唇を噛み締めていた。

眉を顰めて、今にも泣きだしそうな表情で、俯いたまま、ぽつりとつぶやき始める。


「私……結城くんのことが好き…。
大好きなの」


その声は今にも消え入りそうに微かに震え、服を掴む手も震えていた。


「離れるのはもちろん辛い。

でも、死んじゃうより何倍もまし。

生きててさえくれれば、それでいいの。


生きていれば、離れても、いつか会えるんだよ?
でも、死んじゃったら…それでおしまい、なんだよ?

ねえ、分かるでしょ?」


最後の言葉と共に上げた顔は涙に濡れ。

怒りと悲しみが混じり合った表情を浮かべていた。

今、彼女を悲しませている原因は、間違いなくオレで。

でもこんな時、何て言ったらいいかも分からなくて。

オレはただ頷いて、彼女に同意することしかできない。


「……ああ、分かるよ」


すると彼女は、大きく目を見開いてから、悔しそうに眉根を寄せた。


「分かるなら、どうして……?
どうして、自分をもっと大切にしないの?!」


「……ごめん」


「謝ってもらいたいんじゃない!
どうしてかって聞いてるの!」


「それは……」


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