キオクノカケラ
「……記憶喪失ってこと………?」
その彼女の声は小さく、掠れていた。
今にも泣き出しそうな顔で、章さんの腕を掴んでいるその手は
微かに震えているのが分かった。
「私のこと、分からない?……」
私は俯いたまま、首を横にふる。
「………そっか」
哀しそうに目を伏せて、消えそうなくらいか細い声で
そう、言った。
なんだか申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
私は、どうして忘れてしまったの
こんなに、心配してくれる人がたくさんいるのに…
誰ひとり分からない
そんな自分に苛立つ。
涙が零れそうになる。
泣くまいと下唇を噛みしめ、
ぎゅっと拳を握ると
ふいに強く腕を掴まれた。
恐る恐る顔を上げると、
さっきまで伏せていた目と顔を上げて、私の目をしっかりと見る彼女の姿があった。
「……結城くんは?」
「結城くん?」
どうしてそこで結城くんの名前が出てくるんだろう。
「だって、結城くんは詩織ちゃんの」
「恵」
結城くんは、彼女の言葉を強く遮った。そのままゆっくりと首をふる。
「結城くん、でも!」
「恵、いいから………頼むよ」
「結城…本当にいいんだな?」
「ああ…悪いな、光一」
私には全く理解できない会話をして、結城くんは私を見た。
「詩織。オレはちょっと会議に行ってくるから抜けるけど、恵たちが話してくれるから」
「…う、うん……あの、ありがとう」
私をここまで連れてきてくれたお礼を言うと、彼は優しく笑った。
そのまま綺麗な顔が近づいてくる。
その彼女の声は小さく、掠れていた。
今にも泣き出しそうな顔で、章さんの腕を掴んでいるその手は
微かに震えているのが分かった。
「私のこと、分からない?……」
私は俯いたまま、首を横にふる。
「………そっか」
哀しそうに目を伏せて、消えそうなくらいか細い声で
そう、言った。
なんだか申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
私は、どうして忘れてしまったの
こんなに、心配してくれる人がたくさんいるのに…
誰ひとり分からない
そんな自分に苛立つ。
涙が零れそうになる。
泣くまいと下唇を噛みしめ、
ぎゅっと拳を握ると
ふいに強く腕を掴まれた。
恐る恐る顔を上げると、
さっきまで伏せていた目と顔を上げて、私の目をしっかりと見る彼女の姿があった。
「……結城くんは?」
「結城くん?」
どうしてそこで結城くんの名前が出てくるんだろう。
「だって、結城くんは詩織ちゃんの」
「恵」
結城くんは、彼女の言葉を強く遮った。そのままゆっくりと首をふる。
「結城くん、でも!」
「恵、いいから………頼むよ」
「結城…本当にいいんだな?」
「ああ…悪いな、光一」
私には全く理解できない会話をして、結城くんは私を見た。
「詩織。オレはちょっと会議に行ってくるから抜けるけど、恵たちが話してくれるから」
「…う、うん……あの、ありがとう」
私をここまで連れてきてくれたお礼を言うと、彼は優しく笑った。
そのまま綺麗な顔が近づいてくる。