キオクノカケラ
またキスされる、と身構えていた私の耳元で、一言。


「さっきはごめん」


そして、ニヤッと笑うと背を向けた。


「ああそうだ。章には気をつけろよ、詩織!」


肩越しに、そんな言葉を残して、彼は部屋から出ていった。

その後ろ姿に手を伸ばしたくなったのは、どうしてだろう。


「章さん?」


どうして章さんに気をつけるんだろう。


「気をつけろ、だなんて…ひどいな」


ひどい、なんて言ってるけど、

その顔は、全然哀しそうじゃない。

むしろ不敵な笑みを浮かべている。



……やっぱ気をつけよう、かな


「えーっと……どこから話そうかな」


「恵、とりあえず自己紹介からしましょう?」


「「そうだな」」


四人でなにやら勝手に話が進んでいたようで

ドアの所の三人と、恵さんは私の前に立った。


「私は、望月恵(もちづき めぐみ)。隼くんと光一くんは幼なじみで、詩織ちゃんはクラスメートで親友だよ、よろしくねっ」


ねっ、の時に首を傾けて、可愛らしく微笑んできたのが、

恵さん


「俺は、日向隼(ひなた はやと)。恵と光一は幼なじみで、お前とはクラスメートだ。」


よろしくな、って頭をわしゃわしゃ撫でてきたのが、

隼くん


「私は、秋本葵(あきもと あおい)。ひとつ先輩になるのだけれど、普通に接してくれて構わないわ。よろしくね。」


大人っぽくて、綺麗に笑うお姉さんが、

葵さん


「おれは、深陰光一(みかげ こういち)。隣のクラスで恵と隼は幼なじみ。……よろしく」


眼鏡をかけてて、最後に目を逸らしたのが、

光一くん


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