キオクノカケラ
「………詩織?」


私の顔をのぞきこむ。

彼の顔はとても綺麗で、私は目が離せなかった。

…きれいな琥珀色の瞳。

芸能人でもなかなかいないような整った顔立ちの彼は、とても優しい瞳をしていた。


「詩織」


「なっ………」


彼の顔が近づいたと思ったら、もう唇が触れていた。


パンッ!


乾いた音をたてて、私の手に熱が生じる。


「なっ何するのっ!!」


「は……?」


「こんなことしてきて、あなた一体誰なんですかっ!」


「詩織?お前、何言ってるか解って………」


そこまで言って、彼は首をふった。


じんじんする手より

赤くなった彼の頬より

傷ついたような彼の目に、私は心が痛んだ。


「だからどうして、私の名前を知ってるの?………」


公衆の面前で、

初対面の人にいきなりキスされて

被害者は私のはずなのに。

どうしてあなたが傷ついているの

どうして私は、

そんなあなたを抱きしめたいって、泣きたくなるの

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